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日本の都市計画の成果を海外に向け発信したい

  • 藤井 さやか
  • 藤井 さやか
  • 2013年度(第2期生)

Profile

所属先
筑波大学システム情報系社会工学域准教授
最終学歴
東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻博士(工学)
派遣先
カナダ・トロント大学スカボロ人文地理学科
派遣期間
2013年9月〜2014年8月
シカゴ視察
シカゴ視察
トロント大学校舎にて
トロント大学校舎にて
Q1
今回の研究テーマを、ご紹介ください。

日本や北米では、戦後の住宅難に対応するため、1950-70年代に大量の公共住宅団地を整備しましたが、その多くで老朽化が進み、更新の時期を迎えています。人口の減少や高齢化が進む中、日本の住宅団地の更新をどのように進めていくのかは、都市計画・住宅政策上の大きな課題で、対応策の一つとして、PPP(public-private partnership)とよばれる民間企業と公共が連携して事業を進める取り組みが注目されています。
私の研究の目的は、トロントで進行中の北米最大級の公共住宅団地における建替え事業の実態と課題の把握で、建替え事業の計画内容、居住者の移転・新規入居の状況、民間企業と公共の役割分担、事業の評価などを調査しています。研究を進める中で、日本と北米の公共住宅団地の社会的な役割や抱えている問題の違い、建替え事業の社会的意義の相違などが明らかになってきました。今後は、こういった違いを認識しつつ、日本の建替え事業を円滑に進めるためのヒントを整理していく予定です。

Q2
この留学で、主にどのようなことを行ってこられたのか、簡単にお答えください。

こちらではカナダのトロント大学人文地理学科に客員教授として所属しています。この学科では、日本のようなゼミ体制をとっておらず、教員が運営する研究室や実験室はありません。そのため、私も特定の研究室には属しておらず、個人で研究を進めています。こちらでの受け入れ教員は、旧知の友人であり、共同研究者でもあるアンドレ・ソーレンセン人文地理学科長です。ソーレンセン先生と定期的に打ち合わせを行って、研究の進め方や調査の方針を相談しています。また関連する学会やセミナー等に積極的に参加し、そこで知り合った先生方に、研究や調査への協力をお願いし、助言をいただきながら、研究を進めています。
こちらに来てから、たくさんの研究者の皆さんとの出会いがありました。研究対象の住宅団地にはトロント大学主催の生涯学習センターがあり、そこのコーディネーターである女性の先生とは、研究関心が近く、また2児の母同士でもあることから、意気投合し、調査や視察旅行に同行したり、研究に関する意見交換を行っています。また現在オフィススペースを提供してもらっている社会福祉学部の先生方にも、研究への助言をいただいたり、関連する研究者をご紹介いただくなど、大変お世話になっています。
研究活動としては、膨大にある関連研究資料の読み込みと研究者へのインタビュー、住宅団地の現地調査、居住者や開発者へのインタビューを並行して進めています。その際、日本の住宅団地の現状を説明する機会も多いため、並行して日本の都市計画事情をこちらの学会等で発表することも行っています。

Q3
国際フェローシップについての評価

トロントは物価も地価も税金も高い都市ですが、日本財団の国際フェローシップの充実したサポートのおかげで、何も心配せずに生活でき、研究に集中できる環境をいただけて、本当にありがたく思っています。また家族全員で1年間、こちらで生活できたことは、子どもたちにとっては得難い経験となり、家族にとっても貴重な時間となりました。これもフェローシップの手厚いサポートがあったからこそです。
都市計画は、人々の生活の場を対象としているので、子どもたちの学校や習い事を通じて、こちらの社会の仕組みを理解し、家族ぐるみでお付き合いできる現地の友人や、私と同様に在外研究でトロントに来ている世界各国からの友人ができ、地域とのつながりが得られたのは、研究にとっても大きなプラスになりました。研究テーマや渡航先の制約もなく、自由に研究に取り組めるフェローシップはなかなかないと思いますので、ぜひ積極的に挑戦されることをお勧めします!

Q4
日本に戻ってきてから、この留学の成果を、
どのように生かそうとお考えか、お答えください。

こちらで出会ったたくさんの研究者とのつながりを活かして、さらに研究を拡大していきたいと思っています。公共の役割が縮小する中で、更新が必要な公共住宅団地をどう再生していくか、所得格差の拡大が懸念される中で住宅のアフォーダビリティをどう高めていくかなど、都市計画の中でも住宅政策に焦点を当てた比較研究を今後は進めていきたいと思っています。また日本の都市計画は、海外の様々な取り組みを参考にして発展してきましたが、その前提となる条件や社会構造の違いが十分に理解されないまま、導入されている制度も少なくありません。一方で、これまでの比較研究を通じて、日本の都市計画の優れた点先進的な点を客観視できるようになったので、今後は積極的に日本の都市計画の成果を海外に向けて発信していきたいと思っています。
都市計画は国固有の制度の影響が強いため、教育の場においても、日本の制度や事情がどうしても中心になってしまいますが、トロント大学のカリキュラムでは、海外の都市計画課題の理解にも同様の重点が置かれ、卒業後は世界で活躍する学生が多数います。今回の経験を教育にも活かし、世界で活躍する人材の育成にもより一層取り組んでいきたいと思っています。